子どもの頃から大好きだったテレビ時代劇がテレビ欄から消えて早数年。
最後に観たのはなんだっけ(๑• . •๑)?
たぶんスペシャル番組として放映された『鬼平犯科帳』だと思うけど、それは最後まできちんと観たのかどうか記憶にない。
なぜかというと、それは2時間が長いから。
放映時間が20時からだと、それはちょうど私の入浴時間とぶつかるし、かといって21時からだと観終える時間は23時ちょい前(2時間ドラマといっても2時間まるっと放映しないよね)なので晩くなる。
時代劇に限らず2時間スペシャルドラマは話が冗長になりやすく、相当内容が面白くないと最後まで飽きずに観ることができないと思うし。
さらに言うと私の中での「鬼平」は萬屋錦之介なんじゃっっ!!
と、前置きはそのくらいにして。
『なぜ時代劇は滅びるのか』(新潮新書 / 春日太一)では、時代劇研究家の著者が愛を持って「時代劇が滅びた理由」を分析しています。
たしかに最近、地上波で放映される連続時代劇はNHKくらい。かつて、年に1回程度、放映されていた『鬼平犯科帳』のスペシャル番組すらない。
そんな貴重な機会を「話が冗長になるから」「2時間は長い」「主演役者が好みではないから」という理由できちんと観なかった私は、真の時代劇fanではないのかもしれないし、そうなのかもしれない(連続時代劇として放映時間が1時間だった頃は、きちんと観ていました)。
また、時々スペシャル番組として放映される時代劇に必殺シリーズがあるけれど、あれはもう演者たちがヤだ。
私の同級生で同じく時代劇fanの友達も、近年の必殺シリーズは観ないそう。
彼女とは中学で知り合い(小学校は別)同じ高校へ進学し、学生時代は休み時間等に時代劇の話で盛り上がった仲。
好きな時代劇は若干異なるけれど、中・高通して時代劇の話ができたのは彼女だけという貴重な存在。
そして彼女は特にその演者たちが嫌いなわけではないんだけど、それでも「必殺シリーズは観ない」のだから、これはもう…。
そもそも設定が奇想天外すぎてマズイと思う。
閑話休題。
この本で著者は
・時代劇凋落の理由
・時代劇は本当に「つまらない」のかどうか
・時代劇の制作現場から、いなくなった人たち
などについてを熱く語ります。
それは彼の時代劇愛から時に厳しくなるけれど、読んでいて「そうなのか!」とポン!と膝を打つことも。
なかでも著者が考えた時代劇の滅びの理由(の1つだと思う)「顧客層を間違えていたから」は、旅行業界の一部にも通じていると私は思うのね(どの点が旅行業界の一部に通じているかは、後述します)。
著者は長寿番組だった『水戸黄門』が終わった理由が、この「顧客層を間違えていた」ことだと指摘していて。
私は「視聴率が悪くて終わったのかな」と思っていたけど、あの番組は視聴率は悪くなかったと。
ただ「主な視聴者が高齢者だった」ことに問題があったと。
どういうことかというと、あの番組はもともとスポンサーがパナソニック(旧・松下電工)1社で、それが後年、複数企業とでスポンサーになっていたけど、とにかく大口スポンサーはパナソニック。
家電メーカーのパナソニック。
そう『水戸黄門』が問題にしていたのは、家電購入時の決裁権がほとんどない高齢者が主な視聴者だったこと。
いくら視聴率が良くても、スポンサーの商品を買ってくれなきゃ意味がない。
加えて時代劇は制作費用が莫大にかかるので、スポンサー企業も必死。
…というようなことを分かりやすく書いてます。
気になる方は一読を。
さて。この「顧客層を間違えていた」が、旅行業界の一部に通じる理由は、というと。
2020年1月頃から世界的に蔓延してきた、新型コロナにおける旅行業界の売り上げ低迷ぶりは、まだ記憶に新しいと思います。
その時に旅行業界の一部(国内海外旅行者向けのホテルやツアー、航空券などの商品を販売し、それらの販売手数料を収益とするタイプの運営システム。販売補助として旅行ガイドを掲載している)は、そりゃもう惨憺たる有様で。
このような事態になったのは、考えるに「読者層と購買層がかけ離れていた」からに尽きるかと。
いくらUU(ユニークユーザー数)が多くても、読んだだけで予約をしてくれなきゃ収益には繋がらない。
情報だけ無料でgetして課金(予約)しない。
このようなある種フリーライドは、多かれ少なかれ、どの業界でも生じているとは思うけどね。ここはそれに対しての危機意識がとっっても低かったのかと。
そこからは、なし崩し的に負のスパイラルに巻き込まれ…(これ以上書くのはさすがに憚られるので自粛)。
…ねっ。『水戸黄門』の事例と似ていると思いませんか?
本書『なぜ時代劇は滅びるのか』では、作者がさまざまな観点から時代劇が滅びていく様子を綴ります。
時代劇好きの方はもちろん、好きだった方も楽しめる内容なので興味のある方はぜひ。
私が一部の旅行業界と通じている面を感じたように、別の業界にも当てはまる事柄を感じられるかも!?
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今回の読了本▼
『なぜ時代劇は滅びるのか』新潮新書 / 春日太一