【磐田市】静岡県内初開催!「マツオヒロミ展」は香りの博物館で9/21まで

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静岡県磐田市にある磐田市香りの博物館では、2025年7月12日(土)から9月21日(日)まで夏季特別企画展「マツオヒロミ展 レトロモダンファンタジア」を開催。

同展は実力派の人気イラストレーター・マツオヒロミさんによる静岡県内初の企画展です。会場内では彼女の作品展示だけではなく、下描きや手書きキャプションのほか、出版物の閲覧や私物品の展示も!
もちろん同館ならではの香りの体験も楽しめます。

本記事では写真は多めだけれどネタバレしない範囲内で、マツオヒロミさんのレトロモダンで美麗な企画展の様子をご紹介します。
※会期終了後に追記をし更新します

磐田市香りの博物館ってどこにあるの?

磐田市香りの博物館の外観

磐田市香りの博物館の門

JR豊田町駅からまっすぐ北へ約370メートル。「磐田市香りの博物館」は全国的にも珍しい「香り」をテーマとした公立の博物館です。

鮮やかな青緑色をし両翼を広げたかのような2階建ての建物で、1Fにオリジナルフレグランス作りが体験できる「香りの体験コーナー」や、香りのアイテムが購入できる「ミュージアムショップ」があり、2Fには常設展のほか企画展の会場があります。

1Fは無料ですが2Fは有料なので、企画展へは券売機でチケットを購入後、窓口へ提示します。

「マツオヒロミ展 レトロモダンファンタジア」は令和7年度の夏季特別企画展で、前の企画展は「世界のとびだす絵本展」、次は「ふしぎ駄菓子屋 銭天堂へようこそ展」です。

階段上に掲示されているマツオヒロミさんの作品(『百貨店ワルツ』(実業之日本社)

2Fへ上がる階段の上には「マツオヒロミ展 レトロモダンファンタジア」のメインビジュアルとなる『百貨店ワルツ』(実業之日本社)の表紙イラストが掲示されていました。

うわあ…。ネットや書籍でしか見たことのなかった彼女の作品が、こんなところにも…!
同展は静岡県内初の企画展。磐田市香りの博物館に来てくださってありがとうございます。

『百貨店ワルツ』の大きなフォトパネルがお出迎え

2階への階段を上がってすぐのところにある大きなフォトパネル

階段を上った先には同展のメインビジュアルとなる『百貨店ワルツ』の大きなフォトパネルが出迎えてくれました。
そしてパネルの右隣には、同館ならではの「香り体験」が楽しめる香りの小瓶が。

同館の香り体験は磐田市内に工場を持つ高砂香料の協力を得ている本格派。毎回、全展示作品の中から十数点ほどですが作品に合う香りが楽しめます。
もちろん今回も、展示エリアのあちこちに香りの小瓶があるのでお楽しみに。

マツオヒロミさんが調香した「レトロモダンファンタジアの香り」

上の画像はマツオヒロミさんが調香した「レトロモダンファンタジアの香り」です。この香りは1Fの香りの体験コーナーで創ることができるので、気に入った方はぜひどうぞ。来館者先着順受付です。

以前、トラベルJPでオリジナルフレグランス作り体験について書きました▼
静岡「磐田市香りの博物館」で自分だけのフレグランス創り体験!トラベルJP(外部サイト)

ホールから窓側を見たところ

同展では、マツオさんが創り上げた「三紅(みつべに)百貨店」を舞台とした『百貨店ワルツ』の作品を中心に、『マイガーランド』(河出書房新社)と架空のファッション誌『マガジンロンド』(実業之日本社)の作品展示のほか、文学作品の書籍カバーや手書きキャプション、彼女の私物などを展示しています。
なかには展示作品の下絵も!

閲覧コーナーにはマツオヒロミさんの過去作が並ぶ

フォトパネルの裏側は三紅百貨店1階服飾雑貨部と2階化粧品部 美粧部

企画展示室へ入るまでの空間でも彼女の作品を観ることができます。
スタートはフォトパネルの裏側から。三紅百貨店1階服飾雑貨部と2階化粧品部 美粧部の世界が広がります。

直筆マンガの下絵

2階化粧品部 美粧部への展示作品の中には直筆のマンガ下絵(下描き)と、作中に登場する「菫(すみれ)の香り」を体験できる香りの小瓶も。
香りの小瓶は蓋を開けた後、中の香りを直接嗅がずに蓋の内側の香りをお楽しみくださいね。なお、記事内の香り体験の感想は私の個人的なものです。

窓辺の閲覧コーナー

窓辺には、マツオさんの商業誌や同人誌を自由に手に取って読むことができる閲覧コーナーがあります。

ズラリと並んでいる本の数は全部で22冊(2025年8月6日の訪館時に確認)。
今となっては入手困難な同人誌も閲覧できるため、私は近くにあるベンチ(時々、ソファー)に腰掛けて読みました。
商業誌は1Fのミュージアムショップで販売しているので、購入して自宅でじっくり読むのもお勧めです。

3階呉服部

企画展示室へ行く前のスペースは3階呉服部。壁側には三紅百貨店で春と秋に行われた新柄発表会「千紅会」のポスターを掲示しています。

服装や背景からだけでも充分レトロモダンな雰囲気が漂っていますが、どことなく物憂げな表情やしぐさ、大正時代のものにしか思えないレタリングが加わったことで、さらに当時のポスターのように見えました。
作り込みの凄さに圧巻…!

香りの小瓶(左:椿の香り、右:藤の香り)

3階呉服部での香り体験は「椿の香り」と「藤の香り」の2種類。どちらも甘く、ほんのりと懐かしさを感じさせる花の香りです。

現代の香水(左上:化粧用香水セット)

3階呉服部の向かい側には、ゲランの「ミツコ」やシャネルの「No.5」など現代の香水と、20世紀のオーストリアで作られた化粧用香水セットが並んでいます。香水瓶を見ると華やいだ気分になりませんか?

展示室は三紅百貨店の4階以降とイラストセレクション

入り口から見た展示室

三紅百貨店の4階以降は展示室で。

展示室内入り口付近は4階婦人服部で、向かって正面の壁から左奥が5階紳士服部/文具部/喫茶室です。

4階婦人服部

4階婦人服部にはショーウィンドウ内のマネキンと同じポーズをして振り返るモダンガールの姿が。

展示室内へ入って正面の壁に展示されているマンガ

室内へ入って正面の壁には、4階婦人服部で初めて洋装をする女性が主人公のマンガが展示されています。

ここでは「モダンガールの香り」が体験できます。最先端の洋装に身を包んだ彼女たちをイメージした香りを楽しんでみてはいかが。

5階紳士服部/文具部/喫茶室

5階紳士服部/文具部/喫茶室に展示されているのは、イラストのほか作中に登場する包み箱や包装紙、買い物袋類の実物など。さらに展示イラストの下描きも。
香りの体験は喫茶室に漂う「珈琲の香り」です。

同館で体験できる珈琲の香りを嗅ぐたびに思うのですが、私が思っている珈琲の香りそのものなんです。もしかしたら三紅百貨店の喫茶室にも、この香りが漂っていたのかもしれませんね。

三紅百貨店の世界はここまで。
パーテーションの反対側から始まるのは「イラストセレクション」。今までとは異なる雰囲気の世界が広がっていました。

イラストセレクション

同コーナーの壁の色は、それまでの藤色から一変して真っ赤に。

展示しているのは主に着物姿の女性イラストで、香りの体験は展示作品の内容に合った「白と黒の香り」「令嬢の香り」「桜の香り」の3種類です。

「白と黒」(中央下:白と黒の香り)

「白と黒の香り」と「令嬢の香り」は香りの名前が抽象的なので見当がつかない方が多いと思います。
そこで私の感想を…と言いたいところですが、その日の体調や気分に左右されるのか毎回(と言ってもまだ2回ですが)感想が違うんです。会期終了後の追記更新の際に、香りの体験の感想もまとめてお伝えできるといいなあ。

どのような香りなのかは実際にお確かめくださいね。

「白と黒」の下絵(右端が「黒」の柄部分)

上の画像は「白と黒」の下絵と線画です。

3点は「白と黒」の左側部分の下絵と線画なのですが、右端に描かれているのは着物の柄のみ。
illustrator(イラストレーター)等のグラフィックデザインツールを使用して作画する場合に作るレイヤー(層 / 階層)の1枚に、着物の柄だけを当てたんだと思いますが、それにしてもこのバラ模様…細かい…。
マツオヒロミさんの妥協を許さない姿勢に見入ってしまいました。

イラストセレクションは通路の両脇にも

香りの展示室へ向かう通路

イラストセレクションは香りの展示室へ行く通路の両脇にも。正面に見えるのは『万華鏡の庭』(玄光社)の表紙イラストです。

通路に展示されているイラスト

通路に展示されているのは主に着物姿の女性イラストなのですが、なんだかここのイラストはそれまでとは異なり、「大人っぽい」のひと言では言い表せない感じのものも。
退廃的で妖艶、どことなくミステリアスな雰囲気。ここのイラストたち、好き(ハート)。

「赤い記憶」

そのなかでも、何かを訴えているような表情をした着物姿の若い女性が、赤地に白鶴が描かれた衝立前で膝を崩して斜め座りしている様子を描いた「赤い記憶」が一番気になりました。

気になった理由は追記更新時に書きますね。

香りの展示室にはマツオさんの私物も

香りの展示室入り口から室内を見たところ

香りの展示室は通路の突き当りに。
数多くある彼女の作品のなかでも特に好きな『万華鏡の庭』表紙イラストが、「万華鏡の香り」の香り体験用小瓶とともに出迎えてくれました。

「万華鏡の香り」は万華鏡の名の通り数多くの花をブレンドし、少し大人っぽく仕上げた感じに思えました。この香りで香水を創りたい…!

入って右側の展示ガラス(「マツオヒロミ×文学」)

香りの展示室に入って手前の右側は、文学作品の書籍カバーがズラリと並んだ「マツオヒロミ×文学」のコーナーです。
文庫のカバーイラストが多いためイラスト部分は小さいのですが、どれも作品の世界観を表していて書店で見たらジャケット買いしてしまいそう。

ここはそれまでとは異なり、作品は展示ガラスの向こう側に。そのため間近での鑑賞はできませんが、今回の企画展ではご覧のように一度に多くの作品を観ることができます。

私物コーナー(左下:「古書 ル・ソレイユ」の手描き看板)

「古書 ル・ソレイユ」のコーナーにはマツオさんの私物が並ぶ一画があり、そこから『マガジンロンド』に収録されている数々の作品が展示されています。

そうそう。展示室へ入ってすぐ右側コーナーにある看板は彼女の手描きなんですよ。

『マガジンロンド』のコーナー

『マガジンロンド』のコーナーにはイラストのほか、手書きのキャプションや「カフェー・ロンド」「夢見る街」などのマンガなども。
マンガには100年以上前のカフェーで働く少女たちと、30年前の少女たちの日常生活が描かれています。

ワンカラーの着こなし術のモデル・リコ(中央やや下:リコの香り)

この展示ガラス前では、『マガジンロンド』が大正時代に創刊された設定だからだと思いますが「大正ロマンの香り」と、1950年代に同誌の表紙を飾ったリコをイメージした「リコの香り」、2種類の香りの体験が可能です。
大正時代と戦後、2つの時代に思いを馳せながらぜひ嗅ぎ比べてみて!

『マガジンロンド』収録の美麗イラスト

奥のガラス展示内には『マガジンロンド』収録の美麗イラストやマツオさんが製作した「ロンド」の実物のほか、19~20世紀のフランス製サボンラベル(磐田市香りの博物館の参考出展品)が展示され、さらに「浴衣の香り」が体験できます。
私はレモンとリボン柄の浴衣を着た女性のイラストと見比べながら、2度の訪館中に何回も楽しんでしまいました。この香りも好き(ハート)。

『マイガーランド』表紙イラスト

入ってすぐ左側の展示ガラス(画像手前は「マイガーランドの香り」の小瓶)

香りの展示室へ入ってすぐ左側の展示ガラスには、1900年代初頭から100年間にわたるランジェリーの歴史をたどる『マイガーランド』の作品が。
ふだんなかなか知ることができないランジェリーの変遷を、マツオヒロミさんの美麗イラストで一度に見ることができる貴重なコーナーです。

ここでは「マイガーランドの香り」が楽しめます。

レタリングの下描き

展示室中央の展示ケース内には『マイガーランド』収録作品の下絵や、彼女の作品に使われているレタリングの下描きなどが展示されています。

レトロモダンな世界を演出する大切な要のひとつであるレタリングの多くは、展示ケース内の解説によると、マツオさんの夫君である池本剛氏が担当しているとのこと。プロの手によるレタリングの下書きを初めて見た私は、ただただ感心するばかりでした。

ミュージアムショップにはマツオヒロミグッズがいっぱい!

ミュージアムショップ入り口から店内を見たところ

企画展を観た後は1Fのミュージアムショップへどうぞ。

店内中央の陳列棚などには書籍のほか、「静岡県内では実際に手に取ることができない」と云っても過言ではない、マツオヒロミさんのグッズが並んでいます。

ミュージアムショップ内

イラストカードにA4サイズのクリアファイル、アクリルスタンドに缶ハンドミラー、カードケース&カードセットなどなど。
帰宅後に後悔しないようグッズを吟味するのも、楽しいひととき。ポストカードは種類が多く手頃な値段(税込み1枚180円)なので、複数枚購入する方の姿も。

磐田市香りの博物館では9月21日(日)まで「マツオヒロミ展 レトロモダンファンタジア」を好評開催中です。

基本情報(開催情報)

<基本情報>(開催情報)
施 設 名:磐田市香りの博物館
住   所:静岡県磐田市立野2019-15
営業時間:9:30~17:30(入館は17時まで)
マツオヒロミ展 レトロモダンファンタジアの開催期間:2025年7月12日(土)~9月21日(日)
「マツオヒロミ展 レトロモダンファンタジアの入 館 料:一般500円、学生(高校生以上)200円、小・中学生100円 ※各団体割引料金有
休 館 日:毎週月曜日(9/15開館、9/16は休館)
駐 車 場:あり(無料)
公式サイト:磐田市香りの博物館の公式サイト (外部サイト)

2025年9月現在の情報です。最新の情報は公式サイトなどでご確認ください。この記事は無断転載、改変およびAI学習禁止です。(麻生のりこ)